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解決事例/コラム

老後が心配かも 任意後見制度を徹底説明いたします!

2019.08.17

まめ知識

任意後見のすすめ
―任意後見契約の手引き―
(目次)
成年のための後見制度とは
◆成年のための後見制度
◆法定後見(成年後見)
任意後見制度とは
◆任意後見契約とは
◆任意後見契約を結ぶにはどうすればよいのですか?
任意後見契約の締結
 ◆契約の内容は契約を結ぶ者が自由に決められるのですか?
 ◆「即効型」任意後見契約
 ◆「将来型」任意後見契約
 ◆「移行型」任意後見契約
「移行型」任意後見契約について
 ◆移行型任意後見契約はどうして必要なのですか?
 ◆移行型の委任契約はどのような内容になるのですか?
本人の意思と意思能力の確認について
 ◆認知症と契約
 ◆意思能力の確認
任意後見人について
 ◆任意後見人は身内の者でもなることができますか?
 ◆身内の者がいない場合の任意後見人は?
任意後見人の職務
 ◆職務の範囲について
 ◆任意後見人の職務は限定できるのでしょうか?
 ◆任意後見人が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいのですか?
任意後見契約公正証書作成に当たって準備するもの
任意後見契約の公正証書作成費用は
任意後見人や任意後見監督人に対する報酬等
 ◆任意後見人の報酬は
 ◆事務処理費用の支払は
任意後見監督人の選任手続は
 ♦家庭裁判所への申立て
 ◆任意後見監督人の選任はなぜ必要なのですか?
 ◆任意後見監督人の具体的な職務は?
任意後見の登記と登記事項証明書について
 ◆任意後見契約は登記されます
 ◆任意後見の登記事項証明書の交付
任意後見契約の解除と変更
 ◆任意後見契約を途中でやめるときは?
 ◆任意後見契約の内容変更について
尊厳死宣言と任意後見
 ◆尊厳死宣言とは
 ◆任意後見契約と尊厳死宣言


任意後見と遺言

成年のための後見制度とは
◆成年のための後見制度

■ 成年のための後見制度は、平成12年4月から始まりました。このとき同時に介護保険制度が始まり、この二つの制度は、車の車輪のごとく動き出しました。しかし、御承知のように、介護保険制度は急激に利用者を増やし、今では制動のかけられた状態ですが、一方、成年のための後見制度はようやく認知されるようになり、法定後見の申立て件数、任意後見の契約件数とも著しく増えていきました。
■ 成年のための後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。

ところで、私たちを取り巻く社会は、契約で成り立っているといっても過言ではありませんし、私たちが生活する上で、さまざまな利益を享受するには、契約する能力、すなわち判断能力が備わっていなければ満足な利益を受けることはできないといえます。

逆に、判断能力の不十分な方々は、不動産の管理や預貯金の預入れ・払戻しなど財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護保険を利用してのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりすることが難しい場合も少なくありません。

現に必要があっても、判断能力が不十分なため、自分のみの力では正しい選択ができなかったり、あるいは、自分にふりえいな契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害に遭うおそれもあります。成年のための後見制度は、このような精神的障害などの理由で判断能力の不十分な方々を保護し、支援する制度です。

◆法定後見(成年後見)

■ 成年のための後見制度は、大きく分けると、法定後見制度(成年後見制度)と任意後見制度の二つがあります。法定後見制度は、判断能力の程度など本人の事情に応じて「後見(成年後見)」「保佐」「補助」の3つに分かれています。「後見(成年後見)」は、精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が欠けているのが通常の状態である人に、「保佐」は、精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な人に、「補助」は、軽度の精神上の障害により、判断能力の不十分なひとにそれぞれ適用される制度です。
■ 法定後見制度においては、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後継人・保佐人・補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護・支援します。
■ 法定後見は、申立権者が資料を揃え、家庭裁判所に対して申し立てをして審判を受ける必要があります。また、任意後見(登記)がなされている場合は、特別の理由がない限り法定後見の審判がうけられません。つまり、任意後見契約が法定後見に優先する制度になっているのです。

任意後見制度とは
◆任意後見契約とは

■ 任意後見制度は、あらかじめ契約を締結し選任しておいた任意後見人に、将来認知症や精神障害などで判断能力が不十分になったときに支援を受ける制度です。契約は、公正証書で行います。人は年をとるにつれて、次第に物事を判断する能力が衰えていくことは避けなければなりません。時によると、認知症といわれるような状態となり、自分の持っている不動産の管理や預貯金の出し入れなどの自分の日常生活にかかわる重要なものごとについて適切な処理をすることができなくなる場合も決して少なくありません。
■ わが国においては、認知症の患者は、年々増加し、10年後には後期高齢者の数人に一人は認知症を有する患者になるであろうとまで言われています。また、自己や病気などが原因となって同じような状態になることもあります。そのようなときのために、財産の管理や医療契約、施設への入所などの身上に関する事柄を自分に代わってやってくれる人をあらかじめ選んでおくと安心です。このように自分の判断能力が低下したときに、自分に代わって財産管理などの仕事をしてくれる人(これを「任意後見人」といいます。)を定めて、その財産管理などの仕事を代わってしてもらうことを依頼する契約が任意後見契約です。

◆任意後見契約を結ぶにはどうすればよいのですか?
■ 「任意後見契約に関する法律」によって、任意後見契約を結ぶときは、必ず公正証書でしなければならないことになっています。したがって、公証役場に出向いて作成することになります。ただし、本人が公証役場に行くことができない場合は、公証人が自宅や施設に出張することも可能です。
■ 任意後見契約が公証証書によらなければならないとされているのは、法律的な仕事に深い知識と経験をもっている公証人が関与することにより、本人がその真意に基づいてこの契約を結ぶものであることにより、本人がその真意に基づいてこの契約を結ぶものであることを確認し、契約の内容が法律に適った有効なものであることを確保することを制度的に保証するためです。特に、任意後見は、本人の意思のみならず意思能力を確認する必要があるので、公証人が直接本人に面接することが必要になっています。

任意後見契約の締結
◆契約の内容は契約を結ぶものが自由に決められるのですか?

■ 任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約、すなわち任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になるというものです。
 これは任意契約ですから、誰を任意後見人として選ぶか、その任意後見人にいかなる代理権を与えどこまでの仕事をしてもらうかは、本人と任意後見人となることを引き受けれくれる人との話し合いにより、自由に決めることができます。
■ 本人の生活状態や健康状態によって、次の三つの利用形態があり、ご本人のお考えによって選択をしてもらいます。

◆「即効性」任意後見契約

 契約締結後直ちに家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立てを行う形態の契約です。これは認知症等の状態にある本人でも、契約締結の時点において意思能力を有する限り、任意後見契約を締結することが可能なわけですから、公正証書が作成できた後は直ちに繊維後見を開始しようというものです。
◆「将来型」任意後見契約
 
 本人の判断能力が低下する前における生活支援・療養看護・財産管理事務を行うことを内容とする任意代理の委任契約を締結せず、任意後見契約のみを締結し、判断能力低下後に任意後見人の保護を受けることを契約内容とするものです。

◆「移行型」任意後見契約

 契約に当たって通常の委任契約を任意後見契約と同時に締結し、当初は前者に基づく見守り事務、財産管理等を行い、本人の判断能力低下後は任意後見に移行し、後見事務を行うという形態のものです。詳細は次に説明します。

「移行型」任意後見契約について
◆移行型任意後見契約はどうして必要なのですか?

■ 高齢者のみならず病弱な方の中には、まだ判断能力が低下しているわけではないものの、病気のため、あるいは年をとって足腰が不自由なため、代理人を選んで生活の支援や財産管理等の事務を任せたいとの切実な考えを持っている方はかなりいます。もちろん将来の認知症も心配だという悩みを抱えた人も多いわけです。そこで、このような方のために「移行型」は任意後見契約が考えられております。
■ 「移行型」の契約は、まず、通常の委任契約を結びます。そして、この契約とともに、その後認知症や精神障害等により本人の判断能力が低下した時のために任意後見契約を同時に結びます。すなわち、任意後見開始の必要が生じたときには、すぐに最初に結んだ委任契約から任意後見契約への移行を円滑に行おうというものです。これによって、代理人による事務処理が中断されることを避けることができます。この二つの契約は一通の公証証書ですることができます。

◆移行型の委任契約はどのような内容になるのですか?

■ 一つは、親族等が受任者になる場合で、この場合は、受任者に対して報酬が支払われないか、あるいは毎月ごく低額の報酬が支払われる場合が多いようです。この場合、委任事務の内容や代理権の範囲については任意後見契約と同様の内容になることが少なくありません。ただし、あくまでも委任者の生活の状況や健康状態に合わせた契約になりますので、契約条項は委任者本人と受任者の合意で決めることになります。
その中で
(1)委任契約の始期を本人が具体的な特定の事務の履行を求めたときというように、開始時期を定めること
(2)代理権の範囲を本人の生活に必要な限度に限定すること
(3)重要な事務の処理に当たっては、委任者本人の動揺を要するとしたり、さらに監督的な立場の者の同意を要するとすることなど、様々な制限をつけた契約もできます。
■ もう一つは、弁護士や司法書士等の専門家が受任者になる場合です。専門家が後見人となる場合は、多くはその者が所属している団体等が報酬規程を含めた契約内容の基本的な文例を作っており、その文例を基に細部を決めるということになります。基本的文例の多くは、見守り契約と財産管理が柱になっています。

本人の意思と意思能力の確認について
◆ 認知症と契約

■ よく成年後見の相談の中で、家族の方から、「本人はまだら呆れなんです。」とか、「医師から認知症の兆候が見られますと言われています。」「任意後見契約はできるんでしょうか」との質問があります。中には、「医師から認知症だと言われています。(それだけの理由で)認知症なので完全な意思無能力者です」という家族がおります。
  もちろん、本人に判断能力がなければ、契約はできません。しかし、御承知の用に、「認知症」というのは一つの特定の病気を示すものではありませんし、認知症イコール意思無能力者を指すものでもありません。最終的には公証人が個別的に意思能力の程度等を判断し、公正証書が作成できるかどうか決めることになります。

◆意思能力の確認

■ 公証人は、任意後見契約公正証書を作成するに当たり、本人と直接面接して契約の意思及びその意思能力を確認することになります。

  そもそも、任意後見制度は、高齢者が有している残存能力を最大限活用し(本人の自己決定権の尊重)、可能な限り健常人と同様の標準的な生活を送ることができるようにすること(いわゆるノーマライゼイションの実現)をその理念としています。したがって、本人が自分の意思でものごとを考え決めることが可能な限り、自らの責任で自由な内容の契約をすることも尊重されるべきです。しかし、この契約は本人の生活、それに生きてゆくための財産を他人に託すわけですから、本人に契約を締結するというしっかりとした意思があり、しかも、その契約を締結するだけの意思(判断)能力が必要であることはいうまでもありません。
■ このため、認知症やその他の精神的な病気に羅患していることが疑われる委任者の場合、その面接時に、少なくとも日常、新聞を読んだりテレビを見たりしているか、簡単な買物を一人でできるかなどその日常生活の状況を確認し、それらを一応の判断基準として判断能力の有無を確認することになります。その結果、本人の意思能力に疑問のあるときは、適宜医師の意見を聴くなどし、あるいは医師の診断書の提出を求めることになります。


任意後見人について
◆任意後見人は身内の者でもなることができますか?

■ 法律が任意後見人としてふさわしくないと定めている事由がない限り、誰でも成人であれば任意後見人になることができます。本人の子、兄弟関係、甥姪等の親族や親しい友人でもかまいません。また、任意後見人としては、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門家や社会福祉協議会、社会福祉法人などの法人を選任することもできます。これらの後見人は「専門職後見人」とよばれている人たち、あるいは法人です。
■ ところで、任意後見人の資格については、契約に当たっては法律上の制限がなく、どのような人(法人を含む。)を選任するかは、専ら本人の選択に委ねられています。ただ、任意後見監督人選任の段階では、任意後見人受任者に次の事由があれば任意後見監督人の選任請求が却下される結果、任意後見契約は効力を生じないことになるので、かかる事由の有無について、関係者から事情を聴取することになります。
(1)家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任された者
(2)破産者・行方不明者
(3)本人対して訴訟をし、又はしたもの及びその配属者並びに直径血族
(4)不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適さない事由がある者つまり、本人が選任した任意後見人が本人の財産を管理するに相応しくない人物の場合、本人の財産、生活を保護するため、任意後見契約を発動させないこととするのです。
◆身内の者がいない場合の任意後見人は?

■ 先にも述べたとおり、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などの専門家や社会福祉協議会、社会福祉法人などの法人を任意後見人とすることになります。
■ また、最近では、いわゆる市民後見人がたのNPO法人、その他の団体が(任意)後見人や後見監督人になるという実例もあります。専門職後見人は、もちろん、きちんと報酬を得て後見の仕事をします(なお、社会福祉協議会や社会福祉法人は、比較的低額に報酬が設定されているところが多いようです。)しかし、資金的援助をする身内の者がなく、例えば収入が年金のみの低収入の生活者がこの制度を利用しようとすると、報酬設定が高い専門職後見人に委任することは不可能なわけです。そこで「本人の家族以外の第三者が、無報酬あるいはごく低額の報酬で、成年後継人や後継監督人になる」人々がNPO法人を作り、市民後継人として活動する例もあります。また、このような団体はわずかですが、今後ますますその活動が期待されています。

任意後継人の職務
◆職務の範囲について

■ 職務(委任)の範囲については、当事者の合意によるものであり、(委任契約を含め)当事者の社会的地位、生活状況、財産状況、契約締結の動機・目的など事例によって異なった者になります。これらの事情を踏まえた上で、委任者の意図を十分加味し、任意後継人の職務の範囲を決めることになります。
■ 一般的な例としては
 ○財産の保存、管理
 ○金融機関との預貯金取引
 ○定期的な収入の受領、定期的な支出・費用の支払い
 ○生活費の送金、生活に必要な財産の購入
 ○借地及び借家契約に関すること
 ○遺産分割など相続に関すること
 ○保険契約に関すること
 ○各種登記の申請、住民票・戸籍謄抄本・登記事項証明書その他行政機関発行の証明書の請求及び受領
 ○郵便物の受領
 ○要介護認定の申請、認定に関する承認・審査請求に関すること
 ○介護契約、その他の福祉サービスの利用契約
 ○有料老人ホームの入居契約を含む福祉関係施設への入所に関する契約、その他の福祉関係の措置等に関すること
 ○国や都道府県等の行政機関への申請、行政不服申立て
 ○居住用不動産の修繕にかんすること
 ○医療契約、入院契約に関すること
 ○紛争処理のための裁判外の和解(示談)、仲裁契約及び弁護士にたいして訴訟行為および特別受験事項について授権すること
 ○復代理人の責任及び事務代行者の指定に関することなどです。

◆任意後見人の職務は限定できるのでしょうか?
■ もちろん、できます。
(1)まず、代理権権限を制限する方法を示しますと
例えば
 ○財産管理事務野中には、「不動産(あるいは居住用不動産)の処分は含まない」
 ○「生命保険の締結・変更は含まない」
 ○「高額な有料老人ホームへの入所は含まない」
と明示することができますし、あるいは
 ○金融機関の払い戻しにあっては、「○○銀行△△視点の委任者名義の普通預金口座(口座番号○○)から月額合計金○○万円を限度とする払戻し」
というような制限をすることがあります。

(2)次に
「次の事務は、任意後見監督人(あるいは、第三者○○)の書面による同意を要する旨」を定めることもできます。
○不動産の購入(居住用不動産の新築を含む。)及び処分
○福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームへの入居契約を含む。)の締結、変更及び解除
○住居棟の増改築及び大修繕に関する契約の締結、変更及び解除
○弁護士に対して訴訟行為および民事訴訟法第55条第2号の特別授権事項について授権すること
○復代理人の選任

■ さらに、2名以上の任意後継人と契約し、1名に「生活・療養看護の事務」を、他の者に「財産管理」をその職務とし、契約を結ぶことは可能です。ただし、事務の中には双方にまたがる事務(例えば、金融機関の預貯金取引など)もありますので、十分考慮していただかないと、制度として機能しない場合が生じるおそれがありますので、その点留意が必要です。

◆任意後見人はいつから仕事をするのですか?

■ この契約は本人の判断能力が低下したときに備えて結ばれるものですから、任意後継人が本人に代わって事務処理をするのは、本人が自分の財産管理等を十分に行うことができなくなってからということになります。そして、仮定裁判所が、任意後継人を監督する立場の任意後継監督人をせんにんしたときからこの契約の効力が発生し、任意後継人はこの契約で定められた事務処理を始めることになります。

◆任意後見人が金融機関で円滑に事務を行うにはどうすればよいのですか?

■ 金融機関への任意後見開始の届出が必要となります。成年後見の開始とともに後見人等が預貯金の管理をし円滑に払い戻し等を行えるようにするために、金融機関では、成年後見人等に対し、成年後見等開始の届出を求めています。
  このようなことは任意後見の開始による任意後見人も同様で、区別はしていないようです。したがって、任意後見の事務処理を円滑に行うため、また金融機関との無用の紛争を避けるためにも、届出をすることが必要でしょう。金融機関では、それぞれの届出の定型書式を用意していますし、届出には「任意後見登記事項証明書」の提出も求めています。
  なお、このような手続きは、移行型の委任契約に当たっても代理人届等の提出を要求している金融機関がありますので、確認が必要です。

任意後見契約公正証書作成に当たって準備するもの

■ 任意後見契約公正証書に当たって必ず必要なものとして次の書類を用意してください。

 □ 本人の印鑑登録証明書、戸籍謄本または抄本、住民票
 □ 任意後継人となる人の印鑑登録証明書、住民票
   法人の場合は、印鑑証明書、登記事項証明書(登記簿謄本)
 ※上記の証明書類の有効期間は、発行後3か月以内です。

そのほかに、特定の財産(例えば、アパートなどの不動産)の財産かんりであれば、対象の土地や建物の登記簿謄本等が必要な場合もあります。

任意後見契約の公正証書作成費用は

■ 任意後見契約公正証書をつくるには、1件(任意後見契約のみ)について次のような費用がかかります。
 □ 公正証書作成の基本手数料 11,000円
 □ 登記嘱託手数料 1,400円
 □ 法務局に納付する印紙代 2,600円
 □ その他本人・受任者・法務局に交付送付する正本・謄本の証書代(一枚250円、証書はかなりの枚数になります。)
 □ 登記嘱託書郵便用の切手代等が必要になります。

なお、同時に、見守り・財産管理委託契約、さらには死後事務委任契約を締結した場合には、原則として、これらの手数料(各11,000円)と証書代が加算されることになります。

任意後見人や任意後見監督人に対する報酬等
◆任意後見人の報酬は

■ 任意後見契約は、委任契約ですので、報酬を支払うことにしても、無償でもかまいません。同居の親族の場合、多くは、借家(アパート)の管理など特別な事務がない限り、無報酬とする場合が多いのではないでしょうか。なお、事務内容に比して、不相応なきわめて高額な報酬の定めは本制度からして好ましくありません。
司法書士等の専門家や社会福祉協議会など団体が任意後見人になる場合は、それぞれで報酬規程が定められています。ただ、このような専門家が後見人になる場合であっても、報酬については、その金額とか支払方法はすべて契約で決めることになります。
■ 一方、任意後見監督人には報酬が支給されますが、その報酬額は選任した家庭裁判所が決めることになっており、任意後見人の管理する本人の財産から支出されることになります。家庭裁判所は、本人の財産の額、任意後継人の報酬額、監督事務の難易等の諸事情を総合的に考慮して無理のない額を決めているようです。

◆事務処理費用の支払は
■ 財産管理や療養看護の事務処理にかかる費用は、任意後継人が管理する本人の財産から支出されることになります。契約で任意後見人に報酬を支払うことをきめたときは、その報酬もこの財産から支出されます。

任意後見監督人の選任手続きは
◆家庭裁判所への申立て

■ 任意後見監督人を選任するには、任意後見人になることを引き受けた人(「任意後見人受任者」といいます。)本人の四親等内の親戚または本人自身が、仮定裁判所に選任を申し立てなければなりません。本人以外の人が申立てて審判を行う場合には、本人が自分の考えや気持ちを表示することができる状況にある限り、本人の同意が必要です。なお、本人の同意は、申立ての要件ではなく、本人の同意書などは不要です。
 このように、本人が後見開始をまだ希望していないのに、その意思に反して任意後見監督人が選任され、任意後見人が本人に代わって仕事を始めるという心配はありません。

◆任意後見監督人の選任はなぜ必要なのですか?

■ 任意後見人が事務処理をするのは本人の判断能力が低下した後のことですから、任意後見人の事務処理が適正におこなわれているか否かを本人がチェックするのは難しいので、任意後見人にこれをさせることにしているのです。

◆任意後見監督人の具体的な職務は?

■ 任意後見監督人は、任意後継人からその事務処理状況の報告を受け、これに基づいて任意後見人の事務処理状況を家庭裁判所に報告し、その指示を受けて任意後継人を監督します。このようにして家庭裁判所がその選任した任意後見監督人を通じて任意後見人の事務処理を監督することにより、任意後見人の代理権の濫用を防止することができる仕組みになっています。

任意後見の登記と登記事項証明書について
◆任意後見契約は登記されます

 公正証書により任意後見契約を結ぶと、誰がどのような代理権を与えたかという契約内容が、公証人の嘱託により登記されます。そして、現在、この登記(「後見登記」といいます。)は、東京法務局がその事務を担当しており、登記が完了すると、任意後見受任者、又は任意後見人は、任意後見受任者の氏名や代理権の範囲などを記載した「登記事項証明書」の交付を受けることができます。
 任意後見人は、任意後見受任者の氏名や代理権の範囲などを記載した「登記事項説明書」の交付を受けることができます。
 任意後見人は、任意後見契約の効力が生じると、この書面により本人のために一定の代理権を持っていることを証明することができますから、円滑に本人のために代理人としての事務処理を行うことができることになります。また、その任意後見人の相手方として一定の取引などをする人々も任意後見人からこの登記事項証明書の提示をうけることにより、その任意後見人が本人の正当な代理人であることを確認することができるので、安心して取引に応ずることができまる。つまり、この登記事項証明書は、東京法務局という国の機関が発行する信用性の高い文書で、任意後見人の立場や権限を公式に明らかにするものです。
 なお、銀行・郵便局等の金融機関への任意後見開始の届出にあっては、この証明書が必要になります。

◆任意後見の登記事項説明書の交付

■ 証明書の交付を請求できる方は、本人、その配偶者・四親等内の親族、任意後見人、任意後見受任者などに限定されていますが、本人または任意後見人・任意後見受任者などが証明書の交付を受ける場合には、申請書以外の添付書面は必要ありません。
 本人からの委託を受けた代理人も、本人に代わって証明書の交付を請求することができますが、この場合は委任状が必要です。
■ 申請に当たっては、収入用紙(現行・1通につき550円)を貼付した申請書を作成しなければなりません。申請用紙は東京法務局の後見登録課のほか、最寄の法務局または地方法務局若しくはその支局などで入手することができます。また、インターネットを用い法務省のホームページから申請用紙を出力し、郵送で申請することもできます。

※ 窓口申請の場合→申請を直接、東京法務局の後見登録課及び東京法務局以外の各法務局・地方法務局戸籍課の窓口に提出します。

※ 郵送申請の場合→返信用封筒(あて名を明記の上、返信用きってを貼付した長3サイズのもの)を同封し下記の東京法務局の後見登録課へ送付します。
※ 提出先:〒102-8255 東京都千代田区九段南1-1-15
九段第2合同庁舎(4階)東京法務局民事行政部後見登録課

任意後見契約の解除と変更
◆任意後見契約を途中でやめるときは?

■ 家庭裁判所が任意後見監督人を選任する前ならば、いつでもどちらからでも契約を解除することができます。この場合、公証人の認証のある内容証明郵便を相手方に送って通告することが必要です。
 また、双方が合意の上この契約を解除することもできますが、この場合にも公正証書が、公証人の認証を受けた書面によることが必要です。
■ 次に、任意後見監督人が選任された後には、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。なお、任意後見人に不正な行為、著しい不行跡その他の任務に適しない理由があるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。

◆任意後見契約の変更内容について
(1)代理権に関する内容の変更
①代理権に関する内容のうち、代理権を行うべき事務の範囲を拡張する場合
 ○新たに任意後見契約を作成する。
 または
 ○既存の任意後見契約を維持して、拡張した代理権のみを付与する任意後見契約の公正証書を作成する。
②代理権を行うべき事務の範囲を縮減する場合
 ○契約の一部解除が許されないので、全部解除した上で、新規の任意後見契約の公正証書を作成する。
③複数の注意後見受任者との代理権の共同行使を単独行使(各自代理)による任意後見契約へ変更する場合
 ○同様、全部解除の上、新規の任意後見契約の公正証書を作成する。
(2)代理権に関する内容以外の時効の変更
 ○例えば、報酬の額等を変更する場合には、私署証明では認められないので、公正証書により変更契約をする。
(3)任意後見人の変更
 ○既存の契約を解除し、新たな契約を締結する。

尊厳死宣言と任意後見
◆尊厳死宣言とは

病が治る見込みがなく、死期が迫っている場合、自分の意思で治療を打ち切っ
て延命措置はしない、自然な死を迎えたいとの意思表示、それが「尊厳死宣告」
(リビングウィル)です。自分の尊厳を保ちながら、安らかで人間らしい自然な死
を迎えることは、個人の権利であります。そして、これが確実に実行されるた
めには、まだ心身共に健全な内に、自分の意思を文書にしてのこしておくこと
で確かなものとなります。この意思を、公正証書あるいは公証人の認証を受け
た文書として残すことができます。

◆任意後見契約と尊厳死宣言
 
 ほうは、任意後見人の責務として、後見事務を行うに当たっては「本人の
意思を尊重」しなければならないとしています(法律第6条)。そこで、本人が、
延命措置を希望しない旨意思を表示している場合、任意後見契約に当たっては、
その旨を記載した本人作成の書面(一般には、その他の希望等をも記載した「ラ
イフプラン」)を提出し、これを尊重してほしいとする、任意後見契約を締結す
ることができます。すなわち、本人の意思を明らかにしたライフプランを作成
し、これを契約本文の本人の意思尊重の条項などの中にもり込み、さらに作成
したライフプランを公正証書に添付して、医療契約に関する代理権を付与する
任意後見人に遵守するよう約定するのです。
 もちろん、本人が尊厳ある死を迎えたいという意思を一層明確にするため、
尊厳死宣言公正証書を作成しあるいは本人自書の文書を公証人によって認証を
受け、その実現を任意後見人に託し、医療行為の中で実現されることを委託す
ることもできます。
 ところで、このライフプランを利用する尊厳死宣告は、多くは、受任者が本人の親族でない第三者が受任者の場合と思われます。したがって、この場合、任意後見契約と同時に締結される見守り・財産管理委任契約にあたっても同様な条項を入れ、任意後見に移行しない場合でも、受任者が本人のためにその意思(リビングウィル)を実現できるようにしておく必要があります。

任意後見と遺言

■ 任意後見人の労苦に報いるために、任意後見契約を結ぶと同時に、遺言公正証書を作成し、任意後見人により多くの遺産を相続させたり、遺贈をするのが適当な場合も少なくないと思われます。必要書類やその他の資料なども、任意後見契約の場合とほぼ同様ですし、同時に自分の死後の財産をいかに処分するかを決める遺言を作成することは合理的といえます。
 遺言は、御本人が築き上げ大事に守ってきた大事な財産を誰に託すかを自由な意思で決め、(1)無用な相続争いなどを防ぐため、(2)遺言者を親身になって支えてくれた配属者や自らを犠牲にしてまで尽くしてくれた近親者や知人などに対し、いかにその恩に報いるかなどをも考えて作成するものです。
■ 任意後見人は、ここでいう「御本人を親身になって支えてくれた人であり、また、自らを犠牲にしてまで尽くしてくれた人」ではないでしょうか。

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