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解決事例/コラム

遺言は公正証書遺言が安心!

2019.08.23

まめ知識

1 増加する相続問題と遺言 それに伴う家族間での争い
 相続問題をめぐる争いは、今後一層増加することが予想されます。これまで何の争いもない家族が、ある家族の死をきっかけに財産獲得に向けて争うことは無くなった方の意思にそぐわないといえます。

 遺言の目的は、亡くなった方の意思を尊重することにあります。

 上記のような争いが発生しうることは相続財産をめぐる骨肉の争いを描いたテレビドラマなどからご存じのことと思いますが、家庭裁判所が取り扱う遺産分割事件が昭和47年には年間約4900件であったのに、平成元年には訳7000件、平成22年には約1万3500件を超え、その解決に長期間を要していることからも十分うかがえます。

 そして、この傾向に歩調を合わせるかのように公証役場で公正証書遺言をすることも多くなっています。全国の公証役場で作られる遺言公証証書は、昭和47年には約1万7000件でしたが、年々増加して、昭和60年には4万件となり、平成3年には約4万5000件、そして、平成26年には初めて10万件を超えました。
 

 このように親族間に相続財産をめぐるもめ事が起こり易くなり、遺言も増えているということは、民法が定める法定相続制度だけではそれぞれの家庭事情に応じた相続問題を解決するのには不十分なことを示しているといえます。法律は、遺言によって、家庭の実情にあった相続方法を決めたり、遺産分割の方法を定めたりすることを認めているのですから、自己決定の尊重の理念を活かすためにも、これからは、遺言を作成し、亡くなる前に自己の意思を公正証書遺言という形で明示して関係者に正しく伝え、相続財産をめぐる争いを未然に防ぐことが大切といえます。

2 なぜ遺言が必要なのか
 遺言の件数が増えている理由は、いろいろ考えられます。遺言がないと、相続に関する被相続人(亡くなった方)の意思が明らかでないため、法定相続人(あるかたがなくなった場合に、法律上相続人となる者)が様々な権利主張をしがちで、それにより相続をめぐる争いが激しくなるので、これを防止する必要が高くなったことが挙げられます。
 戦前の我が国では、家督相続制度が採られ、多くは長男が全財産を1人で相続する建前でしたから、相続争いも少なく、遺言をする人もほとんどありませんでした。戦後は法の下の平等の理念から共同相続制度が採用されましたので、遺言がないと、共同相続人が原則として遺産分割協議をしなければならず、その協議かまとまらなければ、家庭裁判所の調停又は審判で決めるということになってしまいます。相続人間の争いは、この遺産分割協議の時に表面化してくるのです。
 被相続人が財産を残して死亡した場合、それぞれの相続人にとってはその遺産分割協議のときこそ財産を取得する絶好のチャンスです。場合によっては、何億円、何千万円という値打ちのある財産が手に入るというケースもあります。相続人ら関係者は遺産分割の機会を利用して自分のために少しでも多くの財産を得たいと思い、それぞれが権利を主張し合うことになりがちです。
 被相続人としては、せっかく残した財産ですから、子孫が仲良く分け合い、互いに助け合って暮らしていってほしいと願う気持ちで一杯と思われますが、その気持ちとは裏腹にその財産がかえって骨肉相争うもとにもなることもあるのです。民法は、相続人となる人の範囲やその法定相続分(※1)を決めていますが、これと異なる被相続人の意思があるときは、これが優先しますから、相続人が必ずしも、その法定相続分どおりに財産を相続できるわけではないことに留意する必要があります。

※1 法律で、ある方が亡くなった場合の相続する割合を定めています。たとえば、夫婦(子供二人あり)のうちの夫が亡くなった場合の法定相続分は、妻が2分の1、子供はそれぞれ4分の1となります。

 そこで、自分の死後、遺産をめぐり子供たちや親族間に起こる争いを未然に防ぐために、遺言をして、あらかじめ各相続人の間の遺産の取り分や分配の方法を具体的にはっきりと決めておくのが良いのです。これが、遺言を必要とする理由の一つですが、実際に、そのようなことを考えて遺言をする人が増えています。

3 特に遺言が必要な場合
 遺言が特に必要な場合について、具体例をいくつか挙げてみることにします。

(1)夫婦の間に子供がいない場合
 夫婦間に子供がなく、夫が遺産のすべてを長年連れそった妻に相続させたいときは、遺言が必要です。遺言がなければ、相続人が妻と夫の兄弟姉妹の場合は、妻の相続分は4分の3で、残りの4分の1は夫の兄弟姉妹が相続することになるからです。

(2)息子の妻に財産を相続させたい場合
 息子の妻は、息子の両親の遺産については、相続権がありません。例えば、息子に先立たれた親が、亡き息子とその妻との間に子供がいないときは、親の遺産は、すべて亡き息子以外の子供たちが相続してしまいます。このような場合には、遺言で息子の妻のために然るべき遺産を贈る(これを「遺贈」と言います。)ようにしておくのが思いやりというものです。遺言は遺された者へのメッセージと言えるでしょう。

(3)特定の相続人に事業承継、農業承継をさせたい場合
 個人事業者である場合や、会社組織になっていてもその株式の大部分を持っている個人がその事業を特定の子に承継させる必要があるときがあります。例えば、その子が親の片腕となって、事業の経営に当たっている場合には、その事業用財産や株式が法定相続により分割され、経営の継続が保てなくなることがあります。農業経営についても同じような問題があります。このようなことを防ぐには遺言をして、事業承継、農業承継に支障のないように定めておくことが大切です。

最近では、こういった事業承継をいかに円滑にしていくかがかなり注目され、会社法も毎年といっていいくらい少しずつ改正されています。

(4)内縁の妻の場合
 「内縁の妻」とは、単なる同棲者ではなく、社会的には妻として認められていながら、ただ婚姻届がだされていないだけの事実上の妻のことです。このような内縁の妻には、夫の遺産についての相続権は全くありません。したがって、内縁の夫が内縁の妻に財産を残したいのであれば、遺言で遺産を相続させる配慮をしておくことが必要です。

(5)相続人が全くいない場合
 相続人がいない場合は、特別な事情がない限り、遺産は国庫に帰属します。そこで、遺産を親しい人やお世話になった人にあげたいとか、社会福祉関係の団体・菩提寺・教会等に寄付したいという場合には、その旨を遺言として残しておく必要があります。

(6)その他
 相続人間で紛争が予測される場合(先妻の子供と後妻との折り合いが悪い場合などもこの場合に含まれます。)相続人が外国に居住している場合、遺産を公益事業に役立てたい場合、知人や友人に遺産を贈りたい場合、相続権のない孫に遺産を贈りたい場合、身体障害者である子供により多くの遺産を残したい場合などは、あらかじめ遺言で、相続人間の遺産の配分方法や相続人に害に特定の人や団体に遺産を相続等させることをはっきりと決めておくことが必要です。

4 遺言は誰でもできる
 遺言とは、一口でいえば、故人の生前の意思をその死後に実現させるための制度で、満15歳以上者のであれば、誰でも自由に遺言をすることができます。遺言は、家族の事情、家族の実体などに合わせて、相続人に対して遺産を合理的に配分したり、あるいは、相続人以外の個人、法人、公共団体等に対し遺産を与えたり寄贈したりすることができるなど、多様な機能をもっています。
 日本では、遺言があれば民法の法定相続より優先するのですから、これからは「財産を残すなら、遺言も残そう」ということが常識となるでしょう。遺言がない場合の法定相続は、遺産分割協議によって行われますが、遺産分割協議の場では、相続人が自分に都合のよい主張をしがちで、話合いのつきにくいことが少なくありません。自分の子供たちに限って仲違いをするはずがないという考え方は、被相続人の死後には通用しないことも覚悟すべきでしょう。
 遺言をしておけば、遺産にからむ争いを少しでも防止できますし、残せた相続人も遺言者の意思に沿った遺産の配分を円満に実現させることができます。

5 そもそも遺言とは
 遺言は、一般的には、死の間際に残す言葉というようなイメージを与えるようですが、法律でいう遺言は、必ず書面に書いたものでもなければなりません。したがって、本人の声で、遺言の内容を録音テープに吹き込んでも、テープは書面ではありませんから、遺言としての法律上の効果は認められません。
 法律上の遺言は
 ①遺産の処分に関係するもの
 ②婚外子の認知
 ③相続人の(※2)廃除あるいはその取消し
  (※2 虐待等を行った相続人の相続権を失わせることを家庭裁判所に請求する意思表示のこと。)
 ④未成年者の後見人の指定
 そのほか、人の身分に関係するものなど法律に決められた事項についての意
思表示でなくてはなりません。もっとも、法律上の遺言事項以外に『付言事項』
として、そのような遺言をした遺言者の率直な気持ちを相続人に伝える記載が
付加されることは少なくありません。
 また、法律上の遺言は、書面にしておかなければならない上に、その書面は
法律で定められた一定の方式を備えていなければなりません。そうでないと、
法律上の遺言としての効力がありません。
 法律上の遺言が、なぜこのように方式を大切にするかといいますと遺言は、
その人が死亡したときに初めてその効力が発生するものですから、その方式を
明確にしておきませんと「死人に口なし」で、後になって問題が起こる危険が
あるからです。
 また、遺言は遺言をする本人がしなければならないものですから、他人を介
して遺言をしたり、代理人に頼んで遺言をしてもらうことはできません。

6 遺言の方式
 法律は、遺言について厳格な方式を定めていますが、同時になるべく遺言し
やすいように、普通の場合の方式として
 ①公正証書による遺言
 ②自筆証書による遺言
 ③秘密証書による遺言
 の3つの方法を定めています。
  このほかに、特別な場合の方式として
 ①死亡が危急に迫った者の危急時遺言
 ②伝染病で隔離された場所にいる者の遺言
 ③船舶中にいる者の遺言
 ④遭難船中にいる者の危急時遺言
 などを定めています。
 しかし最も多く利用されている方法は、公正証書遺言と自筆証書遺言です。なかでも、公正証書遺言を作っておくのだ、最も確実な方法であるといえます。

7 公正証書遺言の作り方
 公正証書で遺言するには遺言をする本人が公証役場にいって、公証人にたいして、自分が考えている遺言の内容を直接告げることで作成します。公証人は、本人の精神状態が正常であることを確認した上、本人が告げた内容を法律的に間違いがないようにまとめて書面(公正証書)にしてくれます。このように、遺言をするには、本人の精神状態が正常であることが必要ですから、病気などにより、判断能力や表現能力が衰えてしまった後では、遺言をすることはできなくなります。判断能力を含めお元気なうちに公正証書遺言を作成することをお勧めします。なお、遺言者本人が病気など公証役場に行けないときには、公証人が自宅や病院まで出張してくれます。
 公正証書を作成する公証人は、①裁判官、検察官、弁護士の資格を有する者②法務局長とう多年法務事務に携わり①の者に準ずる学識を有する者の中から公募し、採用試験をして法務大臣が任命する国の公の機関です。
 公証人に公証証書遺言の作成を頼む際には、あらかじめ
 ①本人の印鑑登録証明書(発行から3か月以内のもの)
 ②財産をもらう人が相続人の場合は戸籍謄本、その他の場合は住民票(あるい
  はこれにかわる正確なメモ」
 ③遺言の内容が土地、家屋、マンションであるときは、その登記事項証明書(又は登記簿謄本・権利書等)、土地と建物の固定資産評価証明書(又は固定資産税納税通知書に添付された課税証明書)
 ④証人になってくれる人を2人決め、その住所、職業、氏名及び生年月日を
  書いたメモ(又は住民票)
  (なお、公証役場に紹介してもらう場合は不要です。)
などを用意して持参することです。

 また、事前に公正証書遺言の原案を作成し、それを公証人に事前に確認してもらうことでスムーズに公正証書遺言を作成することができます。特に、相続させる財産が不動産である場合、決まった不動産の内容の書き方があります。したがいまして、公正証書作成に不安のある方は、ホワイトドア司法書士事務所にお気軽にご相談ください。

 ホワイトドア司法書士事務所では、無料で相談をお受けしておりますし、公正証書遺言の原案の作成、公証人との段取りの連絡、必要書類を司法書士の職権での取得等を行っておりますので、お忙しい等の事情がある方は、ぜひご相談ください。
 遺言公正証書は、遺言者が公証人に対して遺言の内容を口頭で説明し、公証人がそれを筆記して出来上がるのですから、文字を読めない人でも遺言をすることができます。また、口がきけないひとも筆談や通訳人の通訳によって遺言内容を伝えて遺言することができます。そして、遺言の筆記が終わると、公証人は遺言者本人と立ち会った証人に内容を読んで聞いてもらいます。これは、筆記の内容が遺言したことと違っていないかどうかを確かめるためです。耳が聞こえない人も、通訳人の通訳や遺言書を閲覧することによって確認することができます。間違いのないことを確かめたら、遺言者と証人がそれぞれ署名押印します。もし、遺言者が病気等で自分の氏名を書けないときは、公証人が代わって遺言者の氏名を書いてくれる手続があります。
 なお、このとき遺言者が使用する印鑑は、原則として、印鑑登録をした実印でなければなりません。そのために、遺言者はその印鑑が確かに本人の実印であることを証明するために印鑑登録証明書を持参する必要があるのです。ただし、証人2人の印鑑は実印である必要はなく認印で差し支えありません。したがって、証人について印鑑登録証明書は不要です。

8 証人について
 公正証書遺言には、必ず2人以上の証人に立ち会ってもらわなければなりません。未成年者は証人となれず、また、遺言内容と利害関係のある人は証人になることはできません。すなわち、遺言者の第一順位の推定相続人及び受遺者並びにそれらの者の配偶者と直系血族の人などは証人になれません。しかし、それ以外の親族や他人ならばかまいません。
 信頼している親しい友人や知人、あるいは銀行員、司法書士、弁護士などが適任です。
 遺言に立ち会う証人というのは、遺言者の精神状態が正常であり、その自由な意思によって遺言が述べられてことなどを含めて遺言公正証書が正しい手順に従って作成されたものであることを証明する役割を担っています。

9 遺言の執行とは
 遺言の執行とは、遺言者が死亡し、遺言の効力が生じた後に遺言の内容をそのとおりに実行することです。
 遺言執行者は
 ①遺言で指定された者 又は
 ②家庭裁判所により選任された者 

がなります。
 遺言執行者は、遺産の預貯金債権の名義の変更、払戻しのときなどに重要な役割を果たしてくれます。したがって、誠実で信頼できる人でなければなりません。場合によっては、遺言によって遺産をもらう人(相続人又は受遺者)を遺言執行者とすることもできます。相続人が数人いる場合は、財産を最も多くもらう人を遺言執行者に指定しておくと、いろいろな事務処理をスムーズに取り運ぶことができることがあります。
 遺言執行者を必要とする場合、これらを遺言で決めておかない場合、遺言者が死亡してから家庭裁判所で決めてもらう必要があり、時間等がかかりますので、あらかじめ遺言の中で決めておくのがいいでしょう。このように、遺言執行者を指定して公正証書遺言をしておけば、遺言者の意思に沿った財産承継を迅速かつ簡明に実現することができます。

10 自筆証書遺言の作り方
 自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文と日付をすべて自分で手書きして、署名押印すればいいのですから、字を書ける人ならばだれにでもできる、簡便な方式の遺言です。
しかし、全文自筆でなければいけませんから、パソコンやワープロ等で浄書したものや、他人に書いてもらったのは、本人の署名押印があっても無効です。(ただし、法律が改正され、平成31年1月13日以降に作成するものについては、遺言書中の財産目録部分に限っては、必ずしも自筆しなくてもよく、パソコン等で作成したり、銀行通帳のコピー等を添付することができるようになりました。)その上、内容を変更、訂正する場合にも法律で定められた厳格な方式によらなければなりません。
 また、法律の専門家が作成するわけではないので、内容も法律的に不備になりがちです。方式や内容が不備な場合には、せっかく作成した遺言が無効となったり、遺言の効力をめぐって、後日紛争の原因となることも少なくありません。
 そして、作成後は自分で保管するため、せっかく作った遺言書を紛失したり、発見者によって書き変えられたり破り捨てられたりする危険もないとはいえません。さらに、遺言者の死亡後、保管者や発見者が遺言書を家庭裁判所に提出し、検認手続を受けなければならないという面倒もあります(なお、平成30年7月に成立した法律により、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が新設されました。施行は平成32年7月10日と定められていますが、この制度を利用すれば、紛失等の危険はなく、検認手続も不要となります。)
 しかし、法律の専門家である公証人の作成した遺言公正証書は、以上のような難点や面倒はありませんし、方式に反するなどの理由で無効となることも避けられます。

11 秘密証書遺言の作り方
 この遺言方式は、遺言者が遺言の文言を書いた書面に署名押印し、これを封筒に入れて密封し、遺言書に押した印と同じ印で封筒を封印しておけばよいのです。
 この遺言書は、その内容を、他人に書いてもらってもよいし、パソコンやワープロを使用して作ってもよいのですが、署名だけは自分で書かなければなりません。
 遺言者は、その封筒を封印したまま公証役場に持参し、それを公証人に差し出し、2人以上の証人に立ち会ってもらって、その封筒の中身が自分の遺言であること、その遺言を書いたのが誰であるのか、その住所、氏名を申し述べます。
 公証人は差し出された封筒に日付を記入し、さらにこれに遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名押印して、その封筒を遺言者に返します。
 この秘密証書遺言は、遺言者本人が保管し、遺言者の死亡後、家庭裁判所による検認手続を経なければなりません。その点は自筆証書遺言の場合と同じです。また、遺言者が印鑑登録証明書を持参し、2人以上の証人を立ち会わせなければならないことは、公正証書遺言の場合と同じです。
 この方式をとるのなら、公正証書遺言をした方がはるかに確実であり、手間もほとんど変わらず、なおかつ安全といえます。したがって、この方式による遺言をする人はあまり多くありません。やはり公正証書遺言をするのがベターといえるでしょう。

12 遺言の撤回・変更

 遺言者は、いつでもその遺言を撤回したり、変更することができます。遺言をした後で遺言者をめぐる周囲の事情や、遺言者の心境にいろいろ変化があることは当然です。そのような場合には、後日遺言を作成することによって、先にした遺言を自由に撤回したり、変更したりすることができます。一度遺言をしたからといって、一生涯それに拘束されることはありません。遺言者の最終の意思が尊重されることになるのです。

13 遺言と遺留分
 遺言、自分の財産を、その死後にどのように処分するかをあらかじめ決めておく制度ですから、原則として本人の自由意思によってどのように決めても構わないわけです。
 したがって、極端な場合には、たとえば、全財産を妻子にはやらないで、自分が世話になった特定の人に遺贈するという遺言もあり得ますし、このような遺言も遺言としては有効なわけです。しかし、この場合、一銭も遺産の分配を受けられない妻子が一家の主人に先立たれ、たちまち路頭に迷うことになっては困るのも事実です。そこで、このような場合に妻子等の一定の相続人を保護するためにその者に分配される遺産の割合を最小限度確保しようとするのが遺留分の制度です。
 この場合、妻子はこのような遺言のあることを知ったときから1年以内に相続財産の半分について減殺(げんさい)の請求により取り戻すことができることになっています。しかし、1年以内にこの請求をしなければ、この権利は、時効によって消滅します。
 いずれにしても、あらかじめ遺留分を考慮したうえで、遺言を作成しておくことが賢明です。しかし、実際には、多くの場合、生前に遺産の前渡し分があったりして、遺留分の計算方法はなかなか複雑で困難です。
 ホワイトドア司法書士事務所では、この遺留分を考慮した最適な遺言内容をご提案させて頂きます。

14 安全確実な公正証書遺言
 遺言というと、何となく高齢者のすることのように思われていますが、満15歳以上なら未成年者もすることができ、親権者の同意も要りません。
 また、どんなに仲の良い夫婦でも同一の公正証書で共同の遺言をすることはできません。遺言は、遺言をすることも、それを撤回することも各自がしなければならないものだからです。
 遺言というのは、本人の自由意思に基づいてするものです。したがって、遺言者を騙したり、脅したりして無理に遺言をさせた者、又はその反対に遺言をするのを妨害した者、遺言書を偽造したり、変造したり、破り捨てたり、隠したりした者は、刑法上の処罰を受けるほか、民法上も相続人としての資格を奪われ、また、財産を遺贈されることになっていた者もその権利を失ってしまいます。
 公正証書遺言の場合には、これらの点を公証人が十分にチェックした上で、本人の自由意思に基づく本当の気持ちを公正証書に記載しますから、あとで問題が起こるようなことはありません。なお、特に法律問題等で複雑なものについては、あらかじめ書類作成の専門家である司法書士の助言を受けておくこともよいでしょう。
 遺言公正証書の原本は、公証役場で責任をもって半永久的に保管(別に原本を映した正本と謄本が遺言者に交付され、これが正式の遺言公正証書となり、そのまま使用することができます。)しますから、遺言書原本が紛失したり、隠されたり、改ざんされたりする心配は全くありません。さらに、遺言検索システム(全国では平成元年以降を登録)により、被相続人の死後であれば、相続人など利害関係人は、公正証書遺言があるかどうかを全国どこの公証役場に対しても問い合わせすることができます。
 また、平成26年4月以降に作成された遺言公正証書については、その原本を電磁的記録でも保存していますので、原本や正本・謄本が大規模災害などで滅失した場合でも復元が可能になりました。
 したがって、公正証書遺言は、最も安全で確実な遺言の方式であるといえます。

15 新しい型の遺言
 民法に定められている遺言は、財産や身分に関することですが、最近、これ以外に故人の生前の意思を死後に実現させるために、新しい型の遺言が行われるようになりました。
 その1は献体の遺言、その2は角膜移植・肝臓移植等臓器提供のための遺言です。
 献体とは、自分の身体を死後、医学教育のために解剖体として提供すること、角膜移植・腎臓移植とは、死後、他人のために自分の角膜や腎臓を移植することです。
 公証役場では、これらの新しい型の公正証書遺言についても、いっそう厳粛に受けとめて対応しております。

16 老後の安心設計 任意後見契約を!!
 遺言と同様、老後の安心の手段として任意後見制度があります。任意後見制度は、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、例えば認知症等によって判断能力が不十分な状態になった場合に備えて、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、療養看護や財産管理に関する法律事務について代理権を与える契約、すなわち任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。遺言の作成とともに、任意後見契約を作成する人も多いようです。

↓こちらのコラムも参考にしてください。

老後が心配かも 任意後見制度を徹底説明いたします!

17 尊厳死宣言も公正証書で!!
 病が治る見込みがなく、死期が迫っている場合、自分の意思で治療を打ち切って「延命措置はしない」、「自然な死を迎えたい」との意思表示、それが「尊厳死宣言」です。これを、公正証書あるいは公証人の認証を受けた文書として残すことも可能です。

18 公正証書遺言の作成費用
 公正証書遺言を作成する場合の費用は、行証人手数料令(政令)に定められた証書の作成手数料とその他の費用です。
 証書の作成手数料は、遺産の額(債務等の消極財産は考慮しません。)により、決まりますが、その遺言により相続する人や遺贈を受ける人・団体等が複数の場合は、それぞれごとにその手数料額を計算し合算します。祭祀継承者を定めた場合は、これも一つの法律行為として、1万1000円が必要となります。
 公正証書の枚数が4枚を超えたときは、枚数加算手数料として超えた分1枚につき250円が加算されます。
 遺産の総額が1億円までの場合は、上記で算出された手数料額に、1万1000円の遺言加算手数料が加算されます。
 このほか、通常、遺言公正証書の正本と謄本各1通を作成して交付しますので、その各通につき用紙1枚250円で計算した手数料が必要となります。
 病気等で公証役場に出頭できない人のために公証人が自宅や病院に出向いて作る際には、病床執務加算手数料が必要となり、上記の証書の作成手数料にその半額が加算され(費用が1.5倍になる)、また、日当1万円(4時間以内の場合)と交通費の実費が必要となります。

公証人手数料
1 公正証書の作成

(1) 法律行為の公正証書
目的の価額                手数料
100万円以下のもの              5,000円
100万円を超え200万円以下のもの        7,000円
200万円を超え500万円以下のもの          11,000円
500万円を超え1,000万円以下のもの       17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下のもの     23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下のもの     29,000円
5,000万円を超え1億円以下のもの             43,000円
一億円を超えるものについては、超過額5,000万円までごとに、3億円までは13,000円、10億円までは11,000円、10億円を超えるものは8,000円を43,000円に加算
算定不能のもの 11,000円
① 目的価格の算定例
 ア 金銭貸借・債務弁済等の片務契約:貸借金等の額
 イ 売買契約等の双務契約:売買代金等の2倍の額
 ウ 不動産賃貸借契約:期間中の貸料総額(ただし10年分まで)の2倍の額
 エ 担保設定:担保物件と債権の額のいずれか少ない額。債権契約とともにするときは、上記少ない額の半額を債権の額に合算した額
② 遺言の手数料
 ア 相続及び遺贈を受ける者が2人以上ある場合、各相続人及び受遺者ごとに、その目的の価額(その人が受け取る利益の総額)によって手数料を算定し、それを合算した額
 イ 祭祀主宰者の指定は、11,000円
 ウ 目的の価額の総額が1億円以下の場合は、11,000円加算
 エ 遺言の撤回は、原則として、11,000円
 オ 秘密証書遺言は、11,000円
 カ 病床執務の場合、通常の手数料の額にその2分の1加算
③ 離婚の手数料
 ア 財産分与と慰謝料はそれらを合算した額で手数料を算定、養育費はこれをは別個に手数料を算定、以上の合算額
イ 年金分割合意は、原則として、11,000円
④ 任意後見の手数料
 ア 公正証書作成の基本手数料は、11,000円
 イ 登記嘱託手数料 1,400円、収入印刷 2,600円分、送料実費
⑤ 委任状の手数料 7,000円
⑥ 建物区分所有法による建物の規約設定の手数料
  23,000円以上(専有部分の個数によって加算)
(2) 事実実験公正証書
 ①事実の実験並びにその録取及びその実験の方法の記載に要した時間1時間ごとに11,000円
 ②休日又は午後7時から翌日午前7時になされたときは、2分の1加算

(ご参考)

 ① 法律行為の公正証書原本の枚数が4枚(B4判横書きの場合は、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円加算
 ② 役場外執務は、日当20,000円(4時間以内、10,000万円)、交通費実費

2 その他

私署証書の認証 11,000円

私署証書の宣誓認証     11,000円
定款の認証     50,000円 手数料とは別に収入印紙40,000円
株主総会等の議事録の認証     23,000円
私署証書の謄本の認証      5,000円
確定日付の付与       700円
執行分の付与      1,700円 承継等1,700加算
正本又は謄本の作成 一枚につき 250円
謄本等の送達      1,400円 送料実費
送達証明       250円
閲覧 一回につき 200円

★電子公証関係
電磁的記録の認証     11,000円 備考参照
電子定款の認証     50,000円 収入印紙不要
日付情報の付与       700円
電磁的記録の保存       300円
情報の同一性に関する証明       700円
同一の情報の提供       700円

(ご参考)
 ① 私署証書又は電磁的記録の内容を公正証書として作成するとしたときの手数料の半額が11,000円を下回るときの認証は、当該下回る額
 ② 私署証明又は電磁的記録が外国分であるときの認証は、6000円加算